「ブゥーーーーン。」
と、小さな羽音を立てて私たちの家のなかに飛び込んできたのは『ニホンミツバチ』です。
『ニホンミツバチ』は、養蜂に使うセイヨウミツバチよりも少し小柄で黒っぽい色をしている野生のミツバチ。
家のなかをひととおり飛び回って、たどり着いたのは朝食のテーブルの上で運よくフタの空いていた『ニホンミツバチのはちみつ』の入ったビンでした。
「うひょーっ!はちみつがこここここんなにたくさん!!」
いちもくさんにビンのフチに付いたはちみつを食べはじめました。
そのしぐさの愛らしいことと言ったらありません。
カメラを近づけようとも、顔を近づけてのぞき込もうとも気にする様子もなく。
ミツバチがこうして蜜を食べるのは自分のためではなくて巣へ持ち帰るためなので、それを想うとその夢中な姿がいっそう愛らしく見えるのです。
と・・・夢中になりすぎてビンの中へ落下した。
とろりと甘いはちみつの中へ、あおむけに。
「うううれしいけど、なんかもうダダダメ・・・かも。」
もがきつつ、しかしニホンミツバチはがんばりました。
はいあがり、ビンから脱出。
「うへぇー。べとべとだよ。」
羽根にも、背中にも、脚にもたっぷりのはちみつがついてしまいました。
べとべとで、羽ばたくことも歩くこともままならない様子です。
ぺろぺろと手をなめたり、脚でこすったりすること15分・・・。
小さな手足で少しずつ、ほんとうに少しずつ、体中のはちみつを丁寧に取りのぞいて、そしてやがてブゥーーーーンと窓の外へ飛んで行った。
なんという命の懸命さ!
昼過ぎ、お花見に出かけました。
ニホンミツバチとともに風に乗ってゆく花びらを見て、いつの間にかサクラのシーズンが過ぎようとしていることに気付いたからです。
やってきた松崎町(まつざきちょう)のサクラ並木は11分咲きとなっていました。
ヤマザクラ。
河原に5キロも続くサクラの並木は、ソメイヨシノにヤマザクラが混在していてとてもよい香りを漂わせていました。
明るい陽射しの中、延々と続くサクラの並木を歩きます。
川の両岸を行って帰って、およそ10キロの距離を1時間。
その間、すれ違った人はひとりだけ。
この静けさと、さりげなさが何とも心地イイ。
10キロ1時間、サクラの下を歩きながらのおしゃべり。
「あー」と言えば「こー」と言う、その呼吸がまた心地イイ。