私たちの住んでいる地域では、山のいわかげや、崖のした
など、ひょんなところで小さな木箱を見かけることがあります。
大きさは、少し大きめの郵便受けほどで、
小さなトタンの屋根が付いています。
一見、神様が祭られている祠(ほこら)のようにも見えます。
どうやらこれ、ミツバチの巣箱だったようです。
しかも最近姿を消しつつあるといわれる
貴重なニホンミツバチのです。
ニホンミツバチたちはこの巣箱に棲みついて、
このあたりに咲いているいろいろな花から、せっせと
蜜を集めます。そういえば私たちの家にも
時々迷い込んで来ていたっけ。
(窓から逃がすと、みんな同じ方角に一直線に飛んでいく)
春から、ハコベ・ホトケノザ・フキ・カワヅザクラ・ヨシノザクラ
オオシマザクラ・アケビ・クワ・クリ・マテバシイ・スダジイ・・・・・
アオシマミカン・ポンカン・レモン・・・・・サンポウカン・ハッサク
ヤマアジサイ・ビワ・アシタバ・ハマボウ・ハマユウ・・・・・カンナ
コスモス・アザミ・イソギク・・・・イヌタデ・ツワブキ。と、秋まで。
それで、たいてい10月から11月、この時期になると
巣箱の中にたっぷり集められた色々な花の蜜は、ジュワッと
絞られてビンに詰められます。これは僕たちの大好物です。
見た目にはほとんどが、半分固形のはちみつ。
なにやら不純物も見られます。手作りだから。
でも、その味といったら。
感動的なかおり。
みかんやレモンの花のかおりは、まるでネロリ。
素朴で純粋な味は、
酸味とほろ苦さと、なんと慈悲深い甘さ。
なぜか、みかんの白い花の奥にするりと潜り込んだ
ニホンミツバチの姿を思い描く、そんな味なのです。